1. 運命を変えた「円形リバーシ」との出会い
すべては、運営しているシェアハウスのリビングから始まりました。棚に誰かが置いていった、年季の入ったひとつのボードゲーム。それが「NIP(円形リバーシ)」でした。
「普通のリバーシと何が違うの?」と興味本位で住人と対戦してみたところ、その奥深さに衝撃を受けました。角がない。盤面がループしている。円周をほとんど支配して「勝った!」と思った瞬間、たった一石からすべてをひっくり返される絶望。その悔しさが、私の「負けず嫌い」に火をつけました。
しかし、いくら検索しても、ブラウザ版もアプリ版も存在しませんでした。世界にはこんなに面白いゲームがあるのに、デジタルで遊ぶ手段がない。その事実が、私を次の行動へと突き動かしました。
2. 「未経験」という壁をAIで飛び越える
ちょうどその頃、「今はAIを使えば誰でもアプリが作れる」という話を耳にしていました。プログラミングの知識はゼロ。コードなんて一行も書いたことがない。それでも、友人が「未経験だけどアプリを作れた」と言っているのを聞き、「自分にもできるはずだ」という根拠のない自信だけを武器に開発をスタートしました。
相棒に選んだのは、GeminiやChatGPTといった最新のAIたち。彼らに「円形のリバーシを作りたい」と投げかける日々が始まりました。しかし、現実はそう甘くはありませんでした。
3. AIとの格闘、そして「産声」を上げたゲーム
開発は、AIとの「もどかしい壁打ち」の連続でした。こちらの意図が正確に伝わらず、何度も修正を繰り返す。何よりストレスだったのは、AIが「良かれと思って」勝手にコードを書き換えてしまい、昨日まで動いていた機能が突然壊れること。画面に向かって何度イライラをぶつけたか分かりません。
しかし、試行錯誤の末、画面上の円周に初めて石が置かれ、色がパタパタと変わった瞬間。その時の感動は今でも忘れられません。プログラミングを知らなくても、AIを「道具」として使いこなせば、頭の中のアイデアが形になる。今の時代が持つ可能性を肌で感じた瞬間でした。嬉しすぎて、シェアハウスの住人全員に見せて回ったのは良い思い出です。
4. 「赤ちゃんCPU」との格闘とアルゴリズムの深淵
ゲームの形はできましたが、次に立ちはだかったのは「CPUの弱さ」でした。特に4人将棋などは、初期のCPUはまるで「赤ちゃんが指している」ような状態。安直な評価関数(どの場所が有利かを判断する基準)では、人間には到底太刀打ちできませんでした。
ここでもAIとの壁打ちを数千回と繰り返し、「いかに無駄なループを減らすか」「評価関数にどのような重みをつけるか」という、プログラミングの本質的な部分を学んでいきました。未経験だったはずの私が、いつの間にかアルゴリズムの最適化に没頭していたのです。
5. これからのビジョン:遊びの「変化形」を量産する
完成したゲームを住人さんたちに見せると、「えっ、これ本当に自分で作ったの!?」と驚かれます。その驚きが、次の開発への活力になっています。
世の中には面白いゲームが溢れていますが、私は「既存のゲームの面白い変化形」をもっとたくさん作っていきたいと考えています。同じルールはいつか飽きが来ますが、そこに少しのスパイス(例えば円形にする、人数を増やすなど)を加えるだけで、新しい戦略と会話が生まれます。
この「ChikuGames」が、シェアハウスのリビングのように、みんなで集まって新しい遊びを体験できる場所になれば嬉しいです。私の挑戦は、まだ始まったばかりです。